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「…あ?」
目を覚めると真っ白な天井が広がっていた。そしてこの寝心地の良さはベッドだろうな。もしやここは保健室…?
窓からは夕焼けの光が入り込んで保健室内を照らしている。
人の気配を感じて横に視線を移すとさっき助けてくれた奴が椅子に座って俯きながらスマホをいじっていた。
「…なあ、風早、なんでお前助けてくれたの」
言葉を発して気づいた。媚薬の効果がすっかり消えている。
「…別に、気分」
「じゃあなんで俺が強姦されそうなのが分かったの」
するといきなり風早が椅子が倒れるのではと思うほどの勢いで立ち上がった。
「あんな丸わかりなヤツこの上ねえだろ!ずっとお前のことあの気持ち悪い目で見てたんだぞアイツは!お前は自分が襲われないとか思って安心してるかもしんねえけどさあ、ブスではねえんだから注意ぐらいしろよ!ったく…」
崩れた言葉使いに目をぱちくりする。
「それがお前の本性?」
「…ああそうだよ。失望したかよ」
「いや別に、どうでもいいし」
「…そうかよ」
「何だよ、慰められたかった??」
「はっ、誰がお前なんかに慰められたいと思うかよ」
「やっぱ性格悪いなお前」
再び沈黙が走る。カラスのカーカーと鳴く声すらうるさく感じた。
「…うそうそ、お前性格全然良いよ。俺の為に叱ってくれたし。言うの忘れてたけど、助けてくれてありがとな」
ニコッとしながら礼を言った。対して風早は顔を真っ赤にプルプル震えていた。
「はあ!?べ、別にお前の為じゃねーし!勘違いすんなよアホ!」
「ところで裕二のことはいいのかよ。誰かに取られてるかもしんねえぞ」
「無視すんじゃねえ!…別に、いいんだよ裕二は」
それを聞いて俺は眉をひそめる。
「あ?お前裕二のこと好きなんだろ?俺のことはいいからアタックしてこいよ」
「だからいいっつってんだろ!その、今は、お前の傍にいたいっつーか…」
伏せ目がちに照れながら途切れ途切れに呟く風早に俺は口に手を当てて吹き出してしまった。
「ぷっ…」
「ああ!?何笑ってんだてめえ!」
「いやあー素直になると可愛いなと思って」
「喧嘩売ってんのかよ上等だよオラぁ!」
裕二に引っ付いていた不良よりも不良やってるな。最初余裕そうにチューしようとしてきた元爽やかくんの面影なんてもう何処にもなかった。
「…そういや、奏佑先輩はどうなった?」
真剣に風早の目を見て聞いた。風早もそれがわかったのか真剣な目付きになる。
「…ああ、まだ俺がいるのにお前との行為を続行しようとするから委員長がもう少ししたら風紀室に来るとか嘘ついたらあっさり手ぇ引いてくれた。委員長には逆らえないらしいな」
「ふーん、しょうもねえ嘘ついたなぁ」
「うっせえ俺も金の力で潰されたくなかったんだよ…つーかこれでこの学園の恐ろしさが分かっただろ。無闇に人を信用すんじゃねえぞ」
「…そだな。気をつけるわ」
先輩に襲われた時の光景がスクリーンのように思い浮かび、それに頬に汗が伝うのを感じながら背中を小さく縮ませた。
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