さよなら俺の平穏

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その声を出したのは男達ではなく、俺でも隣で啜り泣く総隊長でもなかった。 男達は固まって物置の奥…今更だけどここはどこかの倉庫のようだ。そこから声がしたため奥へと顔を向ける。俺もそいつらに続くように横目で見つめた。 するとマットの上やらで寝転んでいた様子の 寝癖をつけている男が沢山の物が並ぶ中顔を出した。 目付きが悪くて不良のような容姿をしている。ちなみにだが裕二にくっ付いている不良ではない。 「お、おい…もしかしてアイツ、(ヒジリ) 椋真(リョウマ)じゃ…」 「この学校で1番最強とか言われてても俺達複数でかかればへっちゃらだろ!」 いや誰だよと首を傾げていたが男達がわかりやすく解説してくれた。 後に言葉を発した戦意を向上させているヤツがその勢いで聖さんとかいう人に拳を構えながら突っ込んでいく。 複数とか言ってたのに結局他の男等は微動すらせず。1人だけってなんか哀れだ。 だが俺でも隙ありすぎだと思うくらいの突っ込み方だったからか聖さんは造作もなくその男の頬に思い切り拳を打った。 男は白目を向き鼻血を噴き出すようにして倒れた。 「ヒッ、1発で…こうなったら言ってた通りに複数で!」 今度こそ複数でタイムセールに主婦達が一斉に駆け付けるみたいに襲い掛かる。 だが大人数相手でも力が弱まることはなく軽く拳を振るうだけで何人も気絶させて打ち勝っていた。 目を丸くしたままボーッとその光景に見入っていたが、男達が全員聖さんに突っ込んで行ったため誰にも襲われる心配がないことに気づき、いつしか顔を上げて俺と同じようにポカンとしていたそいつに声をかけた。 「おい、お前早く今のうちに縄外せ」 「え、あ…」 そいつは気まずそうに目を揺らしながら俺の手足に巻いてある縄を外し始めた。今の状況が理解出来なく混乱している様子でもあった。 縄が解かれると俺は立ち上がってずっと同じ体制のままで辛かった体を伸ばしたりした。 「あーっクッソ体痛え…おい、親衛隊総隊長」 呼び掛けて顔を向けると未だに座り込んでいるそいつはビクッと震えて眉を八の字にして目を逸らす。 「お前さ、今までもこんな犯罪者じみた制裁してきたのかよ」 「…そうだよ、今までこういうことばっかしてきた」 そいつは顔が見えない角度で俯いて震える手を抑えるようにまた片方の手でギュッと握る。 「でも、僕は悪くない!お前が悪いんじゃん!規則を破るのが悪い!僕達親衛隊がルールを守って、生徒会や風紀委員の皆様に近づかないで…我慢してるのに…」 「……」 「っだから、だから僕は悪く…」 総隊長は言動とは真逆の行動を取る。懺悔するかのように俺の手を掴んで目を赤くして泣きながらか弱く、小さく呟いた。 「…ごめん、なさい…」
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