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「おい…おい、正樹!」
「…えッ?」
いつの間にか眠っていたようで目が覚めると目の前に風紀委員長がいた。結構顔と顔の距離が近くて戸惑う。それに委員長も気づいたようで目を丸くしてから頬を赤らめて「すまない!」と距離を置いた。
未だにぼんやりする頭で周りを見渡すが、聖さんはいなくなっていた。
「…もしかして、聖椋真を探しているのか」
「あ?…ああ、そうっす…です」
「こんな変な草むらの所で寝ているとは…やはりヤツに何かされたのか?」
委員長は怒っているように目をキッとさせる。
「…いや、特に何も…てかなんで聖さんのことを?」
「…相川 瑞希が俺達風紀に貴様が大変なことになっていると必死な形相で訴えてきたんだ」
「だが、本当にただ眠っていただけのようだな…」と目を細めて顎を片手で支えるようにして考える仕草をした。
「正樹、貴様は一体何をされていたんだ」
警戒している様な鋭い瞳を向けてくる。凄い心配してくれているのだろうけど、本当のことを言ってどんな反応をするんだろうと少しニヤけた。
「…聖さんと、一緒に寝てました」
「…はぁぁ!?ね、寝て…は!??」
目が倍になるほど大きくして飛び上がるという予想以上のリアクションに吹き出しそうになる。どうして顔を赤くしているのかは分からないが。
「ね、寝たって…貴様、そう言うヤツだったのか、見損なったぞ!!」
顔を青くしたり赤くしたり表情筋(?)が大忙しだ。そして怒鳴りながら効果音がビシィ!って感じで指を突きつけてきた。
「え、は、はあ…?」
「もしかして他のヤツらとも簡単にそういう事をしているのか…?」
「いやいや、小学5年生ぐらいまで家族と一緒に寝てたぐらいで、それ以降は友達んとこに泊まってたまーに…?」
「う、嘘だろ…見た目は純粋そうなのに…」
委員長はショックを受けたかのように膝から崩れ落ちて悲劇のヒロイン的な四つん這いポーズになった。…え?何?もしかして委員長なりの芸?笑った方がいいの??
「アホやなー委員長、寝るって普通はそっちの意味で捉えへんやろ」
すると例のトラウマ人間が笑いながら登場して来た。隠さなきゃ駄目だというのは分かっているけど、やっぱりゲッ…って感じの顔をしてしまう。
「な!も、もしや寝るってそのままの…」
「あたりまえやろー何変なこと妄想してるんよ、委員長て結構変態なんやな〜」
「ざ、…慚愧に堪えない…」
また顔どころか全身をプシューと湯気を出して真っ赤にする委員長。慚愧に堪えないって恥ずかしいって意味…?駄目だ、全く話に着いていけてない。
「…やっぱり正樹でそういう想像、してしもうたん?」
「…!」
出た。あの目が嫌いなんだ。普段は馬鹿をやっているだろうけど、不意に光を失くして黒い何かの念を渦巻かせているあの目。
「ななな…!バカにするな!俺はそんな卑猥な妄想はしない!」
でも委員長はその一瞬の表情には気づいていない。多分わかるのは俺だけだ。あの事件でありのままの奏介先輩を見てしまったから。
「…なあ、委員長。悪いんやけど先に戻っといてくれへん?正樹と2人きりで話したいことがあるんよ」
「!?」
突然の発言に俺は肩をビクリと揺らす。2人きりは、駄目だ。絶対に回避しなくては。
「えーでもぉ、委員長も一緒でいいじゃないすか!ほら、やっぱり皆で戻ったほうが楽し…」
「…んん?」
「…でも、秘密の話なら、仕方ないかもっすね」
結局奏介先輩の顔が怖すぎて駄目だった。
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