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「ゴリズン君、お願いだから裕二を悲しませないでやってくれないかな」
人影のない廊下の端まで風早と不良に連れてこられるとそう告げられた。
…裕二?裕二って誰だ…あ、ワカメメガネのことか。
「あ?でもお前らその裕二のこと好きなんだろ?俺が減ったら敵も減るからいいじゃねえか」
「裕二のこと名前で呼ぶんじゃねえ」
不良が突っかかってきた。やっぱり突っ込むとこそこなんだな。
「…苗字忘れた」
「てめぇぶち殺すぞ」
「まあまあ、それほど裕二のこと想ってないってことだからいいんじゃないの」
風早がニコニコとフォローしてくれた。てかほんとに不良のやつに殺すとしか言われてない気がする。
「そうだよ、俺は歴としたノンケなんだよ。だから俺は裕二を取らねえから安心しろよ」
「ふーん、ノンケなんだ。珍しいね」
「俺は信じねえぞ嘘ついてるかもしれねえからな」
「…じゃあどうすりゃ信じんだよ」
信用してくれない2人にイライラしてしてそう問いかけた。
「どうすれば、か…」
不良はへっとそっぽを向くのとは対に風早は口元を覆いながら考える。そのため、よく表情が伺えない。それから少し経って閃いたのか俺と再び向き合った。
「ゴリズン君…って、ゴリズンって本名じゃないよね。なんて言うの本当は?」
「えっ!ほ、本名は八神 正樹…」
やべえ風早相手なのに本名じゃないって気づいてくれたことなのに感激して口元が緩んでしまった。ゴリズンて言われまくりでゲシュタルト崩壊を起こしそうだった自分の身からしてはやっぱり嬉しかったんだな。はは。
「なんだよ、急に笑って。かわいいなぁ」
「…ひぇ?」
風早にいきなりかわいいと言われて変な声が出てしまった。隣の座り込んでいた不良も驚愕の表情だ。
てかだめだ、やっぱり男に言われてもなんの感情にもなれない。ただひたすら虚しくはなってくるが。
「嘘だよ。これはテストだよ。安心して気持ち悪い笑みだなって思ったから」
「ああそれなら安心だけど、後半の情報は要らねえかな」
やっぱりこいつ裏あったな。この世に爽やかな奴なんているわけねえんだなもう何も信じられねえ。
1人で勝手に人間不信に陥って気づいたら目の前に風早の顔があった。
あまりの近さにときめいたとかそっち方向じゃない意味で頭が真っ白になる。
「…は、お前なにを」
「これでときめかなかったらノンケ確定だよ。安心してね」
俺の耳元でえっちぃ感じの声で囁くと、キスしようとしてんだな。風早の方からさらに距離が狭まってくる。
鼻と鼻がぴた、とくっついた。そして…
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