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ふと隣の父を見るととても難しい顔をしている。
まっすぐに結ばれた口元が細かく痙攣している
何も口を開かぬままに父の家に戻った。
テーブルの上には昨日の食事が並んでいる。
大間のマグロは茶色く錆び付いていた。
父は手慣れた手つきでそれらを片付けてから、私に座るように言った
「倫子、とにかく見ての通りのことだ」
「それは死んじゃうということ」
父は無言で頷いた。
「そうね、私、この体から鍵が外れたの。鉄男が私に刺した鍵が外れたの。
もう全てがバラバラになってしまったの」
不思議に涙なんか出なかった
ただパズルが全て外れてしまったように全てがバラバラになっている。
「もうダメなの このパズル、どんなにはめても最後の一枚がもうないの。はめ終わらないのよ」
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