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そうだよ、今しかないのだ、ぐずぐず考えている暇はない。
具体的にいつだ。ICUでは人の目が多すぎて不可能だ。
そうだ霊安室だ。あそこならだれも来ない。
幸いにして睾丸は心臓が止まっても3時間までなら移植可能だ。
ICUから霊安室に運ばれたとき、そのあとは親族以外は来ない。
親族とは、要するに俺と倫子だけだ。
でも俺の睾丸摘出手術を誰にやらせるか。
俺を手術できる奴だ。一番弟子の結城は今北海道にいる、とてもじゃないが呼び寄せる時間はない。
うちにいる蜷川は、あいつは気が小さい、腕は確かだけれど。人の器として大事なことを任せるのはやや不安があるけれど他にはそんなこと任せられるようなのはいない。
3番手の斎藤はアメリカだし。あとは若くてまだ未熟だ。
蜷川か、よく言い含めるしかないな。これだけのことを俺は一瞬のうちに考えた、というかこのことが稲妻のように頭にひらめいた。
次の瞬間蜷川の携帯電話を鳴らしていた。
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