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「まあ、いいわ。ところで今晩キミを呼んだのはちょっと頼まれてほしいからなのだよ」
「はい、私にできることなら何なりと」
「実は私の娘の夫が脳動静脈奇形の破裂でほとんど脳死状態なのだよ」
「えっ、倫子さんのご主人がですか」
「そうだよ」
「えっ、まだかなりお若かったですよね」
「そうだ。なにせ新婚ほやほやだからな」
「そんな」
「いや、その通りなのだよ、神は本当に残酷だよ」
「それはとても大変なことですね」
「倫子としてはなかなか夫の死を受け入れることはできない、どうしても夫と共に生きていきたいというのだよ」
「でも脳死ということは」
「そう、その通り、それは戻れない、そして早晩死が来る。だからその前に何としても夫の形見を手に入れておきたいというのだよ。新婚早々で夫を失ってしまうなんてそれは俺も親としてとても忍び難い」
「でも脳死まで来てしまったらその先は必然ですし形見を残すって例えば爪とか髪の毛とかを保存したりするのでしょうか」
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