禁じ手

睾丸移植

　鉄男が死ぬ、もうこれは不思議でもなんでもない、私の中ではもう既定事実だ。わかっているわ、そんなこと、わかっているのではない、もう感じてしまったわ、それは事実として。
「しかし心臓が止まってしまったら全ての機械は外され清められ下の霊安室に移される。そこには特別の面会人、家族つまり我々だが以外は誰も来ない。その時だ。鉄男君の睾丸を取り出してそれを誰かに移植するのだ。そうすれば鉄男君の睾丸はずっと将来に向かって精子を産生し続けることが出来る」
私は父が何を言っているのかわからなかったが、でも最後のフレーズだけは飛び込んできた。鉄男の精子が産生され続ける。それを使えば鉄男の子供を作れる。考えてもいなかったことだけれど確かに出来る。