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実際音楽の前戯なしでセックスをしても何にも盛り上がらず、何にも得られず、とても気まずい白けた空気が支配するだけだった。
たいていのことにはそれほど頓着しない鉄男であったが、このときは素早かった。
直ちに施工会社に電話をかけてマンションの一室を防音室に作り替えて貰った。
少なからず費用は掛かったが、私たちには絶対他のことには代えられない最重要事項だ。出来上がるまでの三週間がとても長かった。お預けを食った犬のようで日増しに不機嫌になっていくのが自分でよく分かった。
晴れて自分の部屋で気兼ねなく自分たちだけの世界に浸れた時の幸せ感は、ほかの何もいらないこれだけで十分だと改めて二人で確認した。
年も改まり結婚式から半年が過ぎ、お互いの鎖も日々の合体の中でとても黒く鈍い光を放つようになってきた。一体感はますます強固なものとなり本当に一緒が自然にという言葉が当てはまる日々が続いていった。
2月の初めのまだ極寒そのものの日、昼過ぎに鉄男から携帯に連絡があった。 「今日は仕事の関係で遅くなるので早く寝ていてください、愛する倫子へ F管のGより」超低音からのメールだ、腹の底に響く。
返信
「それでは私は父のところに行きます、正月このかた一度も顔を出していないので寂しがっているので今日はそっちで食べて来ます。倫子」
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