DAY-1

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@ 大地 「なぁ大地、あそこに座ってんのさっきのかわい子ちゃんとちゃう?」 リフトを降りたその先に座る一人の女。たしかにさっきナンパされてた女だな。上級者コースに一人で来てるみたいだけど、下りれんのか?滑れないけど、とりあえず来ちゃった的な感じか? ま、俺には関係ないけど。って思ってたのに、やたら健ちゃんが話しかけてるし。 二人の会話をじっと聞いていたら、話の流れで俺も紹介してくれて、小林と名乗る彼女と目が合いお互い頭を下げた。 俺は無愛想に、だけど彼女は曇りのない満面の笑みで挨拶をした。 ……やっば。あまりの可愛さに反射的に口元が緩んだ。それを隠すように奥歯に力を入れた。 健ちゃんから名前を聞かれ、彼女は "ミユキです" と名乗った。深い雪と書いて、ミユキだと言った。 「深雪ちゃんやな。よろしゅう。俺ら今日からしばらくこっちにおる予定やからまた会えるとええな!じゃあ俺、先に行くわっ」 しゃべるだけしゃべってさっさと滑り出した健ちゃん。自由すぎるのはいつもの事。 俺も滑ろうと準備を始めたけれど、気掛かりが一つ。このコ、置いていって大丈夫?先に滑らせた方がいい? 考えを巡らせていたら、「私ゆっくりなんで、お先にどうぞ」と彼女。ま、大丈夫か。俺は頭を下げながら「どうも」と一言添え、彼女の視線を背中に感じながら板を滑らせた。 このまま麓までと思ったけれど、なんとなく彼女の様子が気になり、一気に下らず山頂に向かうリフト乗り場で止まり少し様子を見ることにした。 彼女は一向に下りてこない。下りられずに困っているか、屁っ放り腰になりながら木の葉スタイルで下りてきているか。 木の葉で下りられると雪をがっつり削られるから、あまり好まない。正直辞めてくれと思うけれど、俺も昔はそうだったから、そこを責めるつもりはない。だけど、初心者が上まで来んなよ。これが本音。 様子を見に行こうとリフトに乗車して数分。上空から見えたのは、コース上に直角に刺さったボードとそれを足の力で必死に引き抜こうとしてる彼女の姿だった。 ……なんだ、あれ?どんな転び方したらあんな風に板が刺さるんだ? マジうけるんだけど…。どんくせぇ…。 近寄ると、鼻息を荒くしながら身体をねじって板を抜こうとしている。ビンディングから足を外しゃーいいのにと思いながらもう少しこの面白い動きを見学する事にした。 『あーもぉ、どーしよー』 「大丈夫かよ?」 情けない声が聞こえてきたところで、ようやく俺は声をかけた。ゴーグルに隠された彼女の表情は分からないけれど、俺だって分かったらしい。 『えっと……ダイチさん、でしたよね?すみません、ちょっと手を貸して下さい』 手を掴んで引き上げると、ウェアについた雪を払いながら『…恥ずかしい』と言う彼女。 「どんくせぇ…」 小声で言っただけなのに、見事に彼女はこの言葉を拾った。悪意を持って吐き捨てるように言ったわけじゃないのに、完全に口をへの字に曲げて怒りを露にした彼女。 『お世話になりました!ありがとうございました!それでは!』 「あっ…」 あっという間に見えなくなった。 なんだよ…あの女…。
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