DAY-1

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あぁ、もおっ!なんなの、アイツ!! どんくせぇ?私が?! スノボーしててどんくさいなんて一回も言われたことないのに。 "女だから下手" とか "出会い目的" とか思われたくなくてひたすら練習してきたのに。たしかに、あの刺さり方は初心者っぽかったし、ありえない体勢になっていたけど、それは偶然が重なってああなってしまっただけ。 普通に滑ったら、上手い部類に入る自信だってあるのに。あぁっ、思い出しても腹が立つ。 何がこんなに腹立たしいかって、あのダイチって人は”どんくせぇ“って言った後に、"こんな上まで来んな" とでも言いたげに言ったんだ。 「ここ、上級者コースだよ。分かってる?」と。 そりゃ分かってますとも!!何年このゲレンデに通ってると思ってんのよ?!今シーズンなんて住み込みよ!!訳ありだけど! しかも、極め付けに「初心者コースで転ければすぐ男に助けてもらえんじゃない?」とまで言った。 私はそんなの求めてない!純粋に滑りを楽しんでるのに!!女がみんなみんな、ゲレンデで出会いを期待してると思ったら大間違いなんだから。 「姉ちゃん…なんか殺気立ってるけど?お~こわっ。そろそろ団体さんたちのチェックイン始まる時間だからね。スマイル、スマイル」 『青士!ちょっと聞いて』 山頂でのやりとりを青士に事細かに愚痴った。 「その人面白いね。姉ちゃんの顔見た後にその態度って、女に興味ないんだね」 一体何が面白いのか私には理解不能。 だけどきっともう会うこともないでしょう。ゲレンデは広大。どこに泊まっているかも知らないし、毎日このゲレンデで滑るのかも分からない。 また会ったら、それは奇跡。 、 今シーズン、ソウルはオープン3周年を記念して "特別ソウル籠りプラン" を先着8名様で販売した。 共通リフト券を付けた期間限定の10日間を驚きのプライスで提示したものだから、予約開始直後に満員御礼。 食事はもちろん朝晩2食付き。ご要望があれば夜食も。ただ、送迎はしない約束で。 その8名様が今日いらっしゃる。タブレットを開き予約者を確認した。 矢野様(男性2名) 三坂様(男性2名) 石原様(女性4名) 楽しい10日間を過ごしてほしい。 きっと直斗さんは今ごろ、私とは正反対のお淑やかで一人では何も出来ないような恋人と過ごしているのでしょうかーーー。 ガチャン。ペンションのドアが勢いよく開いた。 「ちわーーっ!予約してる矢野っす」
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