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何故夫が使者の正体を話さなかったか。 そして同時に信長がこの二十年の間、十兵衛にわだかまりを抱いていたと帰蝶は気づいた。 「そなた、まさか十兵衛様をこの館にお呼びしたのでは」 「勿論、姉上も共にお会いしたいと伝えました。いけませんか?」 十兵衛との間に起きた諸々など何も知らぬ利治が首をかしげる。 ここで無用に慌ててみせては弟も流石に不審に思うであろう。 「明智様がお見えでございます」 若い侍女が来訪を告げ、利治は満面の笑みで答えた。 「おお来られたか、お通しせよ」 今更どうする事も出来ないので、肚を括った帰蝶は居住まいを正し利治と共に十兵衛を迎えた。 「帰蝶様、新五郎様、またお会い出来るとは思うておりませず…」
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