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「伯父上、十兵衛(じゅうべえ)殿、こたびは厄介をかけてまことにすみませぬ」 帰蝶(きちょう)は明智光安(みつやす)とその甥十兵衛光秀(みつひで)に深々と頭を下げた。 「何を他人行儀な。この明智の城は姫様の里も同然にございますれば」 叔父は人のよい笑みを浮かべ言った。 それより少し後ろに控えた十兵衛は俯いていて表情はよくわからない。 嫁ぎ先の土岐(とき)家から戻った帰蝶が明智の家に預けられる事になったのは(ひとえ)に母の配慮に因るものであった。
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