剣士と竜神

15/19
前へ
/19ページ
次へ
「祭りをやろう」  剣士は言った。  祈祷師は唖然とした。 「祭りだと」 「ああ。これまで長い間、この土地と竜神との関係を保ってきたのは、この村の人々だ。あなた方ではない。  だから土地の作法に則って、これから村の祭りをやる」  祈祷師は領主を振り向き、判断は領主に任せられた。  剣士は妖刀に手をやった。領主がびくりと身じろぎした。  剣士は、そばにいた村長(むらおさ)に言った。 「この刀を預かっておいてくれないか。  それから、どこか落ち着いて話せる場所がほしい」  真に道理と竜神の意思に従いたいなら、今は刀を振り回す時ではない。  話し合うべき時だ。  そう考えて戻ってきた。  妖刀と呼ばれるが、水槌は決して血に飢えた刀ではない。  ――むしろ、それは俺だった。  長い沈黙の後、領主は話し合いの申し出を承諾し、彼も村人に刀を預けた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加