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最近、この土地では領主替えがあった。
以前の領主家は、何代もこの地を治め、人民にも慕われていた家だったが、最近、幕府から咎めを受け、多くの土地を没収された。
この土地も、その一つだという。
代わりにやってきた新しい領主が、今度の水神退治の依頼者である。
領主替えが行われてすぐ、この地はひどい干ばつに見舞われた。
そこで、この新しい領主は祈祷師を雇い、土地の水神に雨を降らせてくれるよう頼んだ。
雨は確かにもたらされた。
しかしその代償として、領主の末娘を生贄に差し出さねばならなくなったというのだ。
「ちょっと待ってくれ」
話の途中で、当然、剣士は領主に言った。
「領主殿。あなたがその契約をなされたのなら、神々との約束は必ず守らねばならぬ」
怒り出すかと思った領主は、意外にも流浪の剣士に向かって平伏した。
「そこを何とかお願いしたいのだ」と。
そして、どこで聞きつけたのか、こうも言った。
「そなたは無敗の剣士と聞いておる。
妖刀をたずさえ、使いこなして居るとか」
たしかにその通りだったが、どこからそんな噂が広まっていくのだろう。
厄介な噂のせいで、最近は面倒ごとに巻き込まれることが多い。
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