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 這うようにして冷蔵庫まで行くと、飲みかけの麦茶をグビッと煽る。それから食い物を物色し、魚肉ソーセージを見つけた。ガツガツと腹に収めると、シンクの縁に掴まって立つ。ふくらはぎがパンパンに張っている。  とりあえず、ヤカンで湯を沸かす。  それから、慎重に歩を進めて、クローゼットから買い置きのカップ麺を出す。迷わず「大盛1.5」と書かれた丼みたいなとんこつ味を掴んだ。  考えごとは、頭に糖分を入れてからだ。  カーテンを開けないまま、仕事机の上のPCを立ち上げる。メールチェックするために受信ボックスを見ると――。 「は? 89件って……ウソだろ」  メールボックスは、毎日チェックしている。仕事の依頼、進度の確認、終わった仕事の礼状……etc.  どんなに多くても1日最高20件だ。それが、89件! 記録だ、記録。最高新記録! 「って、喜んでる場合かよ、馬鹿」  何か、とんでもないミスでもやらかしたのかも。  もしくは、フィルタを掻い潜った新手の迷惑メールか。  ピーーーッ! 「おわっ?!」  ヤカンに叱られた。もつれる足でふらつきながらも、慌ててキッチンへ向かった。 -*-*-*-  1.5倍カップを完食し、随分と人心地がついた。俺は決して大食いじゃないが、たまに無茶食いしたくなって、大盛りも用意しているのだ。  ただ――この空腹は、ちょっとおかしい。まるで3日くらい絶食していたような、そんな尋常じゃない飢えだった。 「ヤバ……」  突如、瞼が重力に手懐けられる。疲労、満腹……ときたら、続くことは、決まっている。抗えない生理現象の気配を感じて、首を振ったが――気付くのが遅かった。  糸の切れたマリオネットみたいに、ガシャリとテーブルに突っ伏す。空のカップ麺の容器が、顔の横に転がる。直後、意識のシャッターが下りた。
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