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放課後になり、サッカー部に所属している俺は部室に向かっていた。渡り廊下に差し掛かった時、前から北大路が歩いてくるのが見えた。
反射的にすぐそばにあった柱の影に隠れた。顔を見られたくないと思ってしまった。深呼吸して、柱の陰から様子をうかがう……。
あれ誰もいない。さっきまで目の前を歩いていたのに。
「気のせいか……」と胸をなでおろした時、「気のせいじゃないよ」と背後から声がした。
思わず肩を激しく震わせて振り向く――――。そこには微笑む北大路が立っていた。腰が抜けて倒れそうな俺に手を回して腰を支える。
どっどっどっと脈が乱れて心臓が痛い。落ちつけと自分に言い聞かせる。
「お、おま、ビビらせんなよ!」
「ごめん、ここまで驚かせるつもりはなかったんだけど」
ごめんねと申し訳なさそうに頭を軽く下げる。謝罪よりもこの体制を早くどうにかしたかった。
「わかったから、離れろって」
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