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ぐいぐいっと胸元を押して離れたいことを示すが、北大路はがっちりと腰に回した手を離そうとはしない。むしろこの状況を楽しんでいるようにも見えた。
「離して平気? まだ腰抜けてるんじゃないの?」
「へいきだって」
「うそだ」
軽く手を緩めると簡単にガクッと落ちてしまう。そしてなにより、落ちそうになった時、北大路の腕を掴んでしまったことが情けなくて仕方がない。俺としたことが縋ってしまうなんて。
「晃くん、嘘は良くないよ」
「うそじゃねぇ、ゆっくり地面におろせ」
「保健室に運んであげるよ」
「いらねぇ。お前に運んでもらうくらいなら、ここにいた方がマシだ」
「僕、随分嫌われてるみたいだね」
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