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困ったと頬をかいて、何も無かったかのようにするから苛立った。
「おまえ、朝のホームルームであんな事しておいて」
「朝のホームルーム?」
本当に何も知らない顔をするからひっぱたきたくなった。
「忘れたのか、みんなの前で抱きついただろ」
「あぁ、ハグのこと? ただの挨拶じゃない。海外では当たり前だよ」
「ここは日本だ、それになんか妙なこと…言ってたじゃねぇかよ」
「会いたかった……ma bebe chatteのこと? ありのままの気持ちを伝えただけだけど」
「きっしょくわりぃんだよ……! だれが子猫ちゃんだ! 子猫なんてツラじゃねぇだろが」
「僕にとっては子猫のような人だよ。欲を言うなら食べちゃいたいくらいに」
「もういい……やめろ、何も言うな」
コイツには全ての言葉を使いこなせてしまう力をもってるようだ。はぁ……なんだか疲れてきた。腕時計を確認すると、短針は部活が始まる時間を指していた。
「うわ、やっべぇ。もうこんな時間じゃん」
腰に恐る恐る力を入れてみると、すっかり元に戻っていた。そのまま体勢を起こして、北大路から離れようとした時、ぐっと抱きしめられた。
「ちょ、おい、なん――」
「少しだけ……このままでいさせて」
胸の中に包まれて、淡い髪の香りが鼻を打ち、北大路の体温が直接俺の体に伝わってくる。あぁ、まただ。心臓にぐっと圧がかかる。耐えられなくなって、肩を押して身を剥がした。
「なんのつもりだよ」
「ほんとに……僕のこと忘れたの」
切なそうに俺を見つめるから、逸らせずにはいられなかった。
「だ、だから、初対面だって」
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