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やっとこちらの声に気づいたのか、振り向いて手を離した。
「わ、わるい」
自分でも驚いてる様子で、はっと瞬きを繰り返してる。困ってるのはこっちのほうなんだけどな。
「どうしたんだよ、ずっと様子へんだけど」
目線を外して、こちらを見ない。頬をかいて、なんだかバツが悪そうだ。何も答えない彼にもう一度問いかけようとした時、なんの前触れもなく突然抱きしめられた。
「なんでもない」
抱きしめる腕には力が入っていない、振りほどこうと思えば簡単にできる。だけど、する気にはなれなかった。
「ど、どうしたんだよ……」
「ほんとになんでもねぇよ。だけど、もう少しだけこうしててもいいか」
弱々しい声出すから、心配になる。背中に手を回して、ぽんぽんって子供をあやすみたいにたたいた。
「あーあ、俺どうしちゃったんだろうな」
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