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「え?」
「だから、最初っから見てたのかって」
「見てたというか、保険室入った時から妙な音は聞こえてたけど、まさかキスしてたなんて思わないだろ」
「結局見てたんじゃねぇかよ……!」
「嫌がってるようには見えなかったからさ。止めていいのかなって」
「どう見ても嫌がってただろうが!」
「嫌々、って言いながら何だかんだ好きなんじゃねぇの」
「そ、そんなんじゃ……!」
「ほんとわかりやすいな」
ぽんぽんって優しく頭を撫でてくる。このまま争いを続けても終わりが見えない、大人な俺はこれ以上怒らない事にした。
「ま、まぁ……お前が来なきゃ……俺は今頃どうなってたか分かんねぇし……ありがとな」っと礼を伝えると祐介は優しく笑った。
「やけに素直だな」
「感謝くらい出来るわ……!」
「あ、あと―――」
ふっと耳元に近付くと息が撫でた。
「あんま……」
――――かわいい顔すんな。
「……は?」
「じゃあな。」
肩をぽんと叩くと、そのまま通り抜けていった。こちらを見ずにふる手に振り返す。
いつの間にか、夕方の日差しがあたりを染め上げていた。祐介は濃い影の中に消えていった。
「い、意味わかんねぇ」
俺は部活を思い出して、駆け出した―――。
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