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おそらく身長は176cm、艶のある黒髪は少し蒼みがかって珍しい色だ。黒縁メガネから見える控えめなまつ毛と泣き黒子から色っぽさが溢れてる。
この男を知っているような気がした。でも世界は広いから同じような顔立ちが存在していても何ら不思議ではないだろう。
気づけば俺の手にはじんわりと汗がにじんでいた。不確かなものが突然、確信に変わってしまった。
「北大路怜です。よろしくお願いします」
この低く響く感じの声色は--アイツしかいないだろ。深く眠っていた記憶を引き上げたその声が、恐ろしくて仕方がなかった。手汗をズボンで拭う。
焦りを隠せない俺とは裏腹に笑顔を振りまく北大路は次々と女子達の心を撃ち抜いていく。苦しそうにもがく女子達を見て、なんとも恐ろしいやつだと改めて思った。
「それじゃあ、北大路くんの席は廊下側の後ろから3番目ね」
返事をして歩き出した時、ばっちり目が合った。思わず目を逸らして何も知りません顔を決め込むが、北大路は微笑み返した。
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