会いたかった?フランスからきた帰国子女

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 慌てて引き剥がそうとした時、ぐっと腰に回された手に力が入って、北大路の唇が俺の耳に触れた。生暖かい息遣いに腰が浮いてしまう。  「会いたかった……ma bebe chatte」と囁いた。  微量な声を聞き取っていた女子達の悲鳴は大きくなり、「今、会いたかったっていったよね!?」と騒ぎ出した。  俺はとんでも無い事になってしまったんだと、ますます自覚した。抜けた腰に精一杯の力を入れて、北大路を引き剥がした。このままコイツを受け入れる事は出来なくて、過去の記憶に蓋をした。 「知らねえよ……誰かと勘違いしてんじゃねーの」  この返事に対して、北大路は驚くこともなく微笑みながら、「そう、ざんねん」とだけ言って指定された席に戻っていった。深く息を吸って呼吸を整える。ぎゅうっと指に力を入れた。 ―――俺の青春はここまでか。
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