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後日談
通り魔事件は犯人不明で迷宮入りとなった。行方不明の高校生も発見されていない。
それもそのはず。あの事件の犯人は昴だし、その昴は俺が殺し、骨も残さず燃やした。
全てを知っているのは、俺と昴だけ。
昴と戦ったことが正解だったかは今でもわからない。俺が昴を殺さなければもっと人が死んだだろう。しかし、俺が人殺しになったのも事実だ。昴と同じ、殺人者に。
あいつが死を選んだのに、俺は生きていていいのか?
俺も死ぬべきではないのか。
「煉くん!」
小比奈の声がした。
「最近よく屋上にいるね」
「あぁ…そうかな」
小比奈が俺の隣にちょこんと座る。
束の間の沈黙。
「ねぇねぇ煉くん」
「ん?」
「煉君は…居なくならないでね」
その一言に心臓が縮んだ。
言葉の裏に、何か真意があるのではと疑ってしまう。まさか…気付いているのか?
「どうしたの?」
小比奈が顔を覗き込んでくる。その大きな瞳に、恐怖を感じた。
なんとか動揺を隠す。
「…ああ、俺は小比奈の前から居なくなったりしない」
「えへへ、じゃあ約束」
小比奈が小指を差し出す。
そうか、これが俺の罰なのか。
自分も死ぬべきかと悩みながら、死ぬことを許されず罪の意識に苛まれ続けることが。
これから俺は小比奈の能力が切れるまで罰を背負って生きていくのだろう。
現実は、物語と違って最終回で終わらないのだから。
指切りをした俺の小指に、金色の指輪が光った。
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