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「ぐっ…うぅ」
昴は煉の腕をゆっくりと引き抜く。
炎で焼き塞がったか血は然程出なかったものの、重傷には変わりない。
体から拳が抜けると、昴は膝をつき前のめりに倒れた。それを受け止める煉。
「…ハハ、勝てなかった」
か細い声で昴が言う。
「…俺が負けてもおかしくなかったよ」
「よく言うぜ…」
ごふ、と昴が血を吐く。
「ありがとう…俺を止めてくれて…」
声が、どんどん小さくなっていく。
「本当に…お前と出会えて…良かっ…た」
最期にその言葉を絞り出すと、昴は何も言わなくなった。
世界が静寂に包まれる。
「なんでだよ…なんで…!」
動かなくなった昴を抱き、煉が独りごちた。
「ハッピーエンドじゃ、駄目なのかよ…!」
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