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「それがどうだよ…こっちに帰ってきたら親はうるさいしバイトはダルい。向こうの世界じゃ影と戦うだけで崇められたのに」
「…じゃあお前は小比奈が捕まったままで良かったって言うのか!?」
雷人が俺の胸ぐらを掴む。その拳にはバチバチと電気が走り、短い髪の毛は逆立っていた。
「そうは言わねぇよ…けどさ…」
雷人の瞳に映る俺の目が紫色に光る。フォンフォンという高い音とともに、薄紫色の光る紐のようなものが俺と雷人の周囲を回り始める。
「俺だけはあっちの世界に残った方が良かったかもって…よく思うんだ、最近」
「昴、お前…」
雷人の髪が下りてくる。それを見て俺も能力を解いた。
「バイトで知らねぇオッサンに怒鳴られたりすると『こいつ、刻んでやろうか』とか思っちまうんだ。思考がもう、あっちに寄っちまってるんだよ」
俺は雷人の手を振りほどくと、その場に座りこんだ。
「俺はさぁ、お前らと一緒に戦ってた時がすげー楽しかったんだよ。もちろん小比奈を助けなきゃいけないのもわかってた。けど、けど…」
「小比奈を助けてから…それからの日々が退屈なんだ。…物足りねぇんだよ」
雷人はもはや何も言わなかった。どんな顔をしているのかも、俺は見れなかった。
「…授業、ちゃんと出ろよ」
雷人はそう言って、気まずそうに去っていった。
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