2人が本棚に入れています
本棚に追加
後日談
ぼんやりと見上げる空に流れる雲。
暖かな光が降り注ぎ、優しい風が頬を撫でる。平和という言葉がぴったりの陽気だった。こんな日には多くの人が日常を謳歌しているのだろう。
けど、俺はどうしてもあの日々が忘れられなかった。仲間とともに文字通り、命を懸けて奔走したあの非日常が。
「昴!またここにいたのか!」
頭の方から屋上の扉を開ける音と共に、かつての戦友の声が聞こえた。
そう、今や只の友達となった彼の名は雷人。俺と同じく、ついこないだまで普通の高校生とは違う世界に生きていた一人だ。
「…雷人か。何だよ、そんなに急いで。『影』でも現れたのか?」
「?何言ってんだ、影はもう全て倒しただろ…じゃなくて、授業始まるぞ!まだ先生来てないから早く…」
「なぁ雷人」
俺は遮って言った。
「…つまんなくねぇか?」
「…何がだ?授業か?そんなの─」
「ちげぇって、全部だよ全部。授業も家もバイトも、全部ひっくるめたこの日常がだよ」
俺は起き上がり、戸惑う雷人の鼻先に顔を突きつけて言った。
「刺激が無ぇんだよ。影と毎日闘ってたあの日々と比べると」
「…何言ってんだよ、そもそも俺らはこの日常を取り戻すために戦ってたんだろ!?」
確かに、俺らはこの日常に再び戻るため戦っていた。
最初のコメントを投稿しよう!