~第壱幕~

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久神は身体能力だけでなく動体視力も優れており、たった一瞬見ただけで被害を受けた重体の男は命に別状は無いと判断し、すかさず救命を促す。 一方で自身は入れ違いで飛び出した幻妖を追い、人込みを掻き分けながら風を切るように走った。 遠目に見えるその幻妖は、夜の暗がりも手伝ってかまるで焼け焦げているかのように全身が暗く、姿形は限りなく人間に近いが、その一挙手一投足はまるで野生の獣のように荒々しく、四肢で地を蹴って走行している。 幻妖は素早い身の熟しで壁を蹴って高く跳躍し、ポールや塀等を飛び移り、遂には柵を越えて線路上へ飛び出した。 翔次もすかさずそれを追って柵を飛び越えると、そこへ電車が通り掛かり、咄嗟にその屋根に飛び移る。 一方で幻妖はその電車の窓を突き破って中へ侵入し、それに対し翔次は表情を歪めながら自身も追って中へ飛び込んだ。 電車の中は当然パニックになっており、幻妖は次々と乗客を襲う。 「てめえ…!!」 翔次はすかさずそこへ割って入り、襲われている乗客を左腕で強引に引き剥がすと同時に幻妖の腹部に蹴りを入れるが、しかし幻妖は一瞬怯んだだけですぐにまた近くの別の乗客に牙を剥いて襲い掛かった。 キリが無いと悟った翔次は、背負っていた竹刀袋で幻妖の首元を抑え付けてそのまま壁に押し付け、更にそのまま再び窓を突き破って自身諸とも外へ押し出す。
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