~第壱幕~

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走行中の電車は近くの駅を通過している最中であり、翔次と幻妖はそのままホームへ落下する。 そこでもまた人集りが突然の事でパニックに陥るが、翔次はこれ以上犠牲を出さない為に幻妖を押し込み、自身毎柵を飛び越えて駅の外へ飛び出した。 この駅は高架上にあった為、自身が飛び出した事で駅のホームの方ではまた騒ぎになっている事が背に伝わる。 一方で落下した先は不幸中の幸いか路地裏になっており、人目がなくなった事で翔次は漸く竹刀袋の紐を解いた。 「鬼殺羅流…!!」 中から鞘毎抜いた大太刀、名は"キサツラ"を翔次は片手で高く構え、頭上から素早く振るって幻妖を一撃で斬り伏せる。 「キシャアァァァァ!!」 幻妖は夥しい断末魔の奇声と共に鮮血を噴き出して息絶えると、まるで蒸発するかのように全身が消滅した。 幻妖は、その命が尽きて魂が抜けると同時に肉体が消滅する為、この世に屍は残らない。 翔次は慣れた様子でそれを見届けると、フーッと長く息を漏らして刀を鞘に納める。 これが翔次にとっては日常だった。 久神である自身は人間を護る為に刀を振るい、人間を糧とする幻妖をその手で斬る…それを久神の天命だと信じている。
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