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しかし、公衆の面前で刀を振るえば変に目立ってしまう為、普段はなるべく人目を避けて行動するのだが、今回ばかりはやむを得ない状況だった。
騒ぎが大きくなる前に自身は姿を眩ませようとするが、
「侍………?」
「……!!」
突然死角から声を掛けられ、不意に驚きを隠せない。
普段なら常に気を張り詰めている為、人の気配に気付かないなんて事は滅多に無い。
しかし今回は、死合い終えた直後だった為にほんの僅かに気を抜いてしまい、虚を突かれてしまった。
翔次はゆっくりと声の方に目を向けると、
「………」
そこにいたのは、一人の高校生くらいの少女だった。
肌色は白く髪は黒く、制服である白いセーラー服を身に纏い、華奢で儚げな雰囲気を醸すその少女は、たった今日常ではあり得ないような光景を目の当たりにした直後の筈なのに、まるで人形のように無機質な無表情のまま、ただまっすぐと一点を見詰めている。
それに対し翔次は不意に眉間にシワを寄せるが、それでも少女は表情すら変えない。
そんな少女に向かって翔次は振り向いて一歩歩み寄りながら、
「おいお前、今見た事は……」
口止めを促すべく口を開いた。
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