~第壱幕~

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「シュウ…?!」 少女が漸く名乗ったのに対し、翔次は自身がよく知った最愛の人物と同じ名前だった事に驚きを隠せず、不意に目を見開く。 辛うじて字は違うと言わんばかりに少女は、制服のポケットに入れていたプラスチック製の名札を翳して示した。 翔次も普段はどちらかというと無表情でいる事が多いのだが、この少女…柊はその比ではない。 これまでの一連のやり取りの中、本当に人形であるかのように一度も表情を崩さない。 暫くして路地裏の細道を抜け出した翔次はそこで柊を下ろし、すかさず振り返って今通ってきた細道に目を向けると、やはり数体の幻妖は二人の後を追ってきていた。 それに対し翔次は予想通りと言わんばかりに口の端を吊り上げ、刀の切っ先をそこへ向ける。 「鬼殺羅流二十五式・陽炎!!」 先と同じように刀の刀身には凄まじい業火が纏い、それはまるで翔次の意志に呼応するかのように放出された。 火炎放射器の如く勢いよく放たれた炎は、縦一列に並んだ幻妖を纏めて焼き払い、しかしそれ以外は必要以上に燃え移る事もなくすぐに鎮火する。
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