一章 パラサイト

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一章 パラサイト

寒い冬の日、朝に屋根に氷柱が下がるのを見た。 今から高校に登校だ。 「じゃあ姉さん、行ってきます」 「うん、呂斗、気をつけてね」 やはり通学路は寒い。 俺は暖かい南の島に行きたかった。 最近仲良くなった同級生の星未来が、昼休みに話しかけて来た。 「呂斗(ろと)君、放課後に家に来ない、パパが会いたいって」 「パパが、何で俺に会いたいのかな」 俺は売店で買ったジャムパンをかじる。 「呂斗は、忍者の子孫ってパパに話したらね、会いたいって」 「俺は忍者の子孫だけど忍術は出来ないよ」 「構わないわ、忍者の顔が見たいからって」 「忍者の顔って有るのかよ」 「放課後に運転手が迎えに来るから、お願い」 とにかく無理矢理に放課後、車に乗せられて、未来の家に向かった。 雪が降り始めた。 車が門の前に止まった。 高い塀に囲まれた屋敷だ。 門は開かれて、車は走り出す。 しばらく森の中の道を走ると大邸宅が見えて来た。 「大富豪じゃないか」 俺は開いた口がふさがらない。 そして車は止まり、大邸宅の食堂に案内された。 王宮みたいな建物で、暖房が効いていた。 そしてメイドがたくさん並んで居た。 壁には大きな絵画が、掛けられている。 天井には美しいシャンデリアがぶら下がっている。 長いテーブルがあり、いろんな和洋の豪華な料理が並ぶ。 テーブルの先には、やり手な風貌の中年男性が座っていた。 腕には高級時計、指には大きな宝石が着いた指輪をはめていた。 「君が呂斗君か、よく来てくれた、私は星未来の父親の、星一輝だ。」 俺は頭を下げた。 「加賀美呂斗です、よろしく」 「座りたまえ、呂斗君」 (貫禄負けするような凄みが有った) 「君は良い時に来た、ダチョウの卵が有るんだ、食べたまえ」 目の前に巨大な卵が運ばれて来た。 「上に穴を開けて有るから生で食べてごらん」 俺はスプーンですくい、食べた、美味しいとは感じなかったが、残すのは失礼と考えて全部食べた。 「ワインも飲みたまえ、忍者の話を聞かせてくれないか」 「すみません、忍者の事は知らなくて、すみません」 それからワインやら、いろいろ食べて、腹が苦しくなってきた。 「呂斗君、顔色が悪いわ、大丈夫?」 未来が心配して背中をさすってくれた。 「呂斗君、空いている部屋で休みたまえ」 「はい、そうします」 俺はメイドに空き部屋に連れて行かれた。 部屋の中にも絵画がかけられている。 豪華な家具がたくさん置いてあり、真ん中に大きなベッドが有った。 俺はベッドに寝転がり、すぐに寝た。 しばらくして目が覚めた。 起き上がり、手を見たら黒いカギ爪が生えていた。 「えっ」 両手にカギ爪が生えていた。 起き上がると、ベッドに未来が、座っていた。 「ごめんなさいね呂斗」 「このカギ爪は何、夢なのか」 「現実よ、あれはダチョウの卵じゃないの」 「何だって」 「あれは、パパが異世界から持ち帰ったドラゴンの卵」 未来は、申し訳なさそうな表情になった。 「ドラゴンの卵、俺は死ぬのか?」 その時、ドアが開き星一輝が入って来た。 俺の指のカギ爪を見て笑顔になった。 「やはりな、君はドラゴンの遺伝子と適合したようだ、間も無く完全なドラゴンになる」 「何だって」 「未来に同級生の遺伝子を集めさせたら、君が適合したのさ」 そう言えば、未来が遺伝子研究と言い同級生の口の中に綿棒を入れていた。 「星さん、ひどいじゃないですか、僕はどうなるのですか」 「ドラゴンになれば大儲け出来る、夢はドラゴンの動物園だ」 「パパは無人島で異世界に通じる洞穴を見付けたの、中世ヨーロッパみたいな異世界でね、ドラゴン住む世界よ」 「ひどい」 「悪いな呂斗君、たまたま異世界でドラゴンの卵を、見つけたが孵らなくて、君に食べさせた」 体中に力がみなぎる、背中がムズムズしてきた、翼が生えてきたようだ。 (ここに居たら殺される) 俺は走って部屋を出た、必死に走り屋敷から出て門まで来た。 門を蹴ると、轟音と共に見事に倒れた。 あがる砂ぼこりの中を駆けた。 近くの山の中の茂みに隠れていたが、体は急激にドラゴンに変わる。 「どうしょう、未来のせいで…」 冬場なのに寒くない。 近くの木には氷柱(つらら)が出来ていた。 しばらく氷柱を見ていたら涙が出た。 (もう家に帰れない) 足も太くなり、長い尻尾も生えた。 ついに体もドラゴンに乗っ取られた。 俺の意識は体の中に入ったようだ。 完全体になったドラゴンは翼を広げて飛び上がった。 高く高く舞い上がる。 翼が力強く羽ばたく。 (俺にはわかる、こいつは故郷に帰るつもりだ、太平洋の無人島の洞窟を目指しているのかわからないが海に出た) 青い大海原をドラゴンが飛ぶ。 (俺は、どうなるんだ、姉さん助けて) 絶望的な状況なのに南の海の美しい青色が目に映る。
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