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「……乙木」
横にいたミカンが僕の手をギュッと握りしめてくれる。
暖かな体温が、僕の冷たい手を包み込む。
でも、この感触もこれで最後かと思うと、残酷なまでに、全てが悲観的にそう思えた。
『皆様、学園ミッションの失敗、とても残念です』
廊下に響くキスラビットの声。
誰ももう、反論する気力なんて存在し無かった。
『あと一歩でクリアだったのですが、とても残念です。しかし、皆様はご存知でしょうか? ゲームには”コンテニュー”というものが存在することを?』
コンテニュー……?
『そうです、これはデスゲーム……所詮はゲームなのです。つまり、コンテニューも可能ということです』
「じゃあ……ッ!!」
力無く項垂れていたデス子が顔を上げる。
『ええ、やり直しは可能です』
「マジかよ……」
「皆様は選択することが出来ます。もう一度やり直し、失敗した学園ミッションを今度は成功されるか、あるいはこのままゲームオーバーの道を選ぶかを!!」
「そんなの決まって――――」
『しかし、忘れてはいけません。コンテニューには《代償》が必要だということを……』
代償……やっぱりそうだ。
失敗したからやり直せる、そんな都合の良い話なんて存在するはずがなかった。
『ゲームセンターに設置されたゲーム機、そこでコンテニューするためには、お金を支払う必要があります。コンテニューには代償が付き物なのです』
「ねぇねぇ、ウサギン、ウサギン。その代償って、一体なんなのかなー?」
辺芸子の質問にキスラビットは低く笑う。
まるで、僕たちの中に芽生え始めた希望を打ち砕くように。
そして、彼は答える。その代償を。
『それは簡単です……』
―――この中の誰かの命です―――
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