23人が本棚に入れています
本棚に追加
【☓月☓☓日(☓) 午前11時31分 / 廊下】
この中の誰かの命……。
なんとなく、予想はついていた。
今日、この数時間で起きたことを考えれば、如何にも言ってきそうな言葉だった。
「クククッ……つまり、この中の誰かが死ねば、他の人間は助かると?」
黒幕の質問に、キスラビットは「その通りです」と答える。
『皆様の誰かが、ドカンちゃんについた赤いボタンを自ら押し、命を支払っていただくことにより、他の皆様はコンテニューすることが出来るのです』
「……なるほど」
しかし、こんなやり取りをしている最中も、僕たちのドカンちゃんは荒々しく警告音を鳴らし続けていた。
『さぁ、時間がありません。皆様のドカンちゃんが爆発するまで、あと44秒』
コンテニューと言っても、ルカは死んだ。
マーガリートも死んだ。
いくらやり直したからといって、彼女たちが戻ってくるはずはなかった……。
『さぁ、決めてください。自らの命を絶ち、お友達を助けるのか、あるいは、ここで全員ゲームオーバーになるのかを!!』
コンテニューという言葉が示す意味、それは分からない。
でも、僕たちには迷っている猶予なんて無かった。
「これは一体、どうすれば……ッ!?」
周りの考えを伺うように、鬼瓦が辺りを見回す。
でも、答えを出せている人間なんているはずもなかった。
僕一人を除いては……。
「僕が……死ぬ」
僕は誰に言うでもなく呟いた。
「……えっ?」
鳴り響く警告音に掻き消されそうだった。
だから、今度はさっきよりも大きな声でハッキリと言う。
「僕が死ぬ」
僕の体内時計が狂ってなければ、残された時間はあと《38秒》程度。
僕は自分のドカンちゃんの赤いボタンに手を掛ける。
「乙木……ッ!?」
当然のように……というと自意識過剰かもしれないけど、ミカンはそんな僕の行為を止めようとしてくれる。
僕は首を横にゆっくりと二回振った。
「こうなってしまったのは僕の責任だ……。あのとき、僕がルカとキスをしなかったから……」
もし人生をもう一度やり直せるとしたら、僕はあそこでルカとキスするだろうか……。
キスしなければ、ルカは死んでしまうことになる。
キスすれば、学園ミッションをクリアすることが出来る。
でも、それでも、こんなこと思うこと自体狂っているのかもしれないけど、僕はもう一度人生をやり直せたとしても、ルカとキスする選択は選ばなかったと思う。
だから僕は後悔なんて、何一つ無かった……。
最初のコメントを投稿しよう!