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「ごめん、ミカン……一緒にいて欲しいなんて言ったけど、いられなかったは……」
「駄目、絶対にそんなこと許さない!! 乙木の両腕を折ってでも、そんなこと絶叫にさせない!!」
ミカンは本当に僕の両腕を折ろうと、僕へと飛び付いてくる。
その殺気に一瞬たじろいでしまうが、止められるわけにはいかなかった。
あと《27秒》。
誰かが死ななければ、全員が死ぬことになる。
ミカンが死ぬことなになってしまうから――――。
『パリンッ!!』
そのとき、何かガラスが割れる音が廊下に小さく響いた。
それと同時に、僕の方へと突進してきていたミカンの体が、一瞬で凍りついたように硬直した。
「……ッ!?」
この効果、僕たちは一度目撃していた。
これは磯烏の《KKK》。
「磯烏……どうして……?」
体を動かさなくなったミカンが、鬼のような形相で磯烏を睨みつけながらそう言った。
「ゴホッ、ゴホッ……せっかくモルモット4号が、私たちの為に死んでくれると言っているのだ。それを止められるわけにはいかないからな……ゴホッ、ゴホッ」
KKKは、煙を吸った人間の体を、五感を生かしたまま動けなくさせる。
しかも効果対象者を事前に設定しておくことも可能で、恐らく磯烏は、キヨスクだけでなく、このクラス全員分のKKKを作成していたのかもしれない。
「気の毒とは思うが、許せ、モルモット12号……ゴホッ、ゴホッ」
KKKの効果は8時間。
これでミカンに阻止される心配は無くなった。
「ありがと……磯烏」
僕は礼を述べる。
これで良かった、これで良かったんだ……。
「…………」
磯烏は何も言わなかった。
僕から顔を背ける。もしかしたら、僕への罪悪感、あるいは感謝の気持ちなのかもしれない。
「絶対……そのボタンを押したら、絶対許さなからなッ!!」
ミカンは喚き続けていた。
獣のような声で、僕が死ぬことを止めようとしてくれていた。
でも、これ以外の選択肢は……。
ボタンに手をかける。
指先で感じる無機質的な冷たさ。
これを押したら僕は死ぬ……。
不思議と怖くはなかった。
絶望は感じなかった。
むしろ、みんなが生き残れる道があって、本当に良かったと、心からそう思えた。
「みんな、あとは任せたよ……」
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