#9「真紅の薔薇」

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「ごめん、ミカン……一緒にいて欲しいなんて言ったけど、いられなかったは……」 「駄目、絶対にそんなこと許さない!! 乙木の両腕を折ってでも、そんなこと絶叫にさせない!!」 ミカンは本当に僕の両腕を折ろうと、僕へと飛び付いてくる。 その殺気に一瞬たじろいでしまうが、止められるわけにはいかなかった。 あと《27秒》。 誰かが死ななければ、全員が死ぬことになる。 ミカンが死ぬことなになってしまうから――――。 『パリンッ!!』 そのとき、何かガラスが割れる音が廊下に小さく響いた。 それと同時に、僕の方へと突進してきていたミカンの体が、一瞬で凍りついたように硬直した。 「……ッ!?」 この効果、僕たちは一度目撃していた。 これは磯烏の《KKK》。 「磯烏……どうして……?」 体を動かさなくなったミカンが、鬼のような形相で磯烏を睨みつけながらそう言った。 「ゴホッ、ゴホッ……せっかくモルモット4号が、私たちの為に死んでくれると言っているのだ。それを止められるわけにはいかないからな……ゴホッ、ゴホッ」 KKKは、煙を吸った人間の体を、五感を生かしたまま動けなくさせる。 しかも効果対象者を事前に設定しておくことも可能で、恐らく磯烏は、キヨスクだけでなく、このクラス全員分のKKKを作成していたのかもしれない。 「気の毒とは思うが、許せ、モルモット12号……ゴホッ、ゴホッ」 KKKの効果は8時間。 これでミカンに阻止される心配は無くなった。 「ありがと……磯烏」 僕は礼を述べる。 これで良かった、これで良かったんだ……。 「…………」 磯烏は何も言わなかった。 僕から顔を背ける。もしかしたら、僕への罪悪感、あるいは感謝の気持ちなのかもしれない。 「絶対……そのボタンを押したら、絶対許さなからなッ!!」 ミカンは喚き続けていた。 獣のような声で、僕が死ぬことを止めようとしてくれていた。 でも、これ以外の選択肢は……。 ボタンに手をかける。 指先で感じる無機質的な冷たさ。 これを押したら僕は死ぬ……。 不思議と怖くはなかった。 絶望は感じなかった。 むしろ、みんなが生き残れる道があって、本当に良かったと、心からそう思えた。 「みんな、あとは任せたよ……」
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