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あと《14秒》。
僕は赤いボタンを押し込んだ――――。
「……!?」
押し込もうとした瞬間のことだった。
僕の手は止まる。
それは誰かの手。
誰かがボタンを押そうとする僕の手を包み込む。
優しく、力強く、ボタンを押す手を止める。
「ダメじゃない、乙木ちゃん」
優しくそう言った声は、僕の手を力強く止めるその手は、血夜来のものだった。
「血夜来、何やってんだ!? あと10秒で……」
「女の子との約束は、破っちゃいけないよ」
「でも……ッ!!」
「”でも”じゃない。ミカンちゃんと一緒に生きていくんでしょ? なら、こんなところで死んじゃダメよ」
そんなこと言ったって、他に手は……。
「乙木ちゃん、ミカンちゃんを守るのよ。絶対に死なせちゃダメよ」
そして、血夜来は僕にだけ聞こえるように囁いた。
―――あのときは、ありがと―――
あのときって……?
聞き返す暇も無かった。
次の瞬間、血夜来は自分のドカンちゃんの赤いボタンを押し、そして彼女の首輪は爆発した。
「……ッ!!」
なんで僕の代わりに?
聞く暇も無かった。
首から吹き出した鮮血。
血夜来はその場に崩れ落ちていく。
真紅のバラが咲き誇るように、辺りは彼女の血で染められていく。
「なんで、血夜来がデスってんだよッ!?」
突然の爆発音。
突然の出来事。
デス子が理解不能と声を張り上げる。
「クククッ……血夜来恋依恋君。やはり、それがお前の選択か」
さも、このような展開を知っていたかのように、笑う黒幕。
「…………」
ミカンは無言で血夜来のことを見つめていて、僕はただ無力にその場に立ち尽くしていた。
「なんで……なんでだよ……」
僕が死ぬべきだった。
このような状況を作ってしまった、この僕が……。
「なんだよ……『あのときは、ありがとう』って……なにが、ありがとうなんだよ……」
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