#0「始まるは国王選挙」

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少子高齢化、不景気、犯罪率上昇、領土問題、他国からのミサイル脅威――――。 この国は五十年前、民主主義から王権制度に大きな舵取りがなされた。 組織化された政治体制では国を脅かす数多くの問題を解決するスピードも、柔軟性も無く、この国は一人のカリスマに支配されることを選択したのだ。 『王様の言うことは絶対』この国の民は声を合わせてそう言った。 「次なる国王は我らが学園の生徒の中から選出されることになっております!」 小川の水ように透き通るも、濁流の水の如き力強さを兼ね備えた美綺瓊の声が体育館の中に響き渡る。 「学年問わず! 性別問わず! 選ばれるのは全校生徒459名の中からただ1人! 国を指揮するに相応しいカリスマ性を持ち合わせた人間こそが国王として適当!!」 その光景を、その神託をその400人あまりの生徒はただ享受するしか無かった。 「全校生徒が一人一票誰かに投票し、最も票を集めた生徒がこの国の二代目国王となるのです!!」 そして、美綺瓊はランウェイを歩き終え、体育館に設置された壇上の上へと辿り着く。 そこから生徒たちを見下ろしながら、学生服に忍ばせた小型の機械を取り出した。 「して、わたくしも生徒会会長という身、国王の座を譲る気は毛頭ありません」 ニコリと微笑む。 「国王選挙とはこれ正に戦争、票が一票でも多い者が国王になることが適当。すなわち、他の全生徒を一人残らず殺し、自分に票を投ずれば、でも国王になることが可能です」 小型の機械を天高く掲げる。 ようやくここに集められた者たちはそれが、なにかのリモコン、つまりは起動装置であることに気づき始めた。 「故、皆様全員を殺すための"爆弾"をこの学園内に仕掛けさせてもらいました」 美綺瓊はそう言って取り出した機械に取り付けられたボタンを押し込んだ。 「爆発は3時間後の本日の正午12時丁度。その時、皆様の命は尽き、わたくし、鳳凰院 美綺瓊がこの国の二代目国王となるのです!!」 壇上の壁に掲げられた巨大な電光掲示板が突如、6桁の数字を表示させる。 『02:54:44』『02:54:43』『02:54:42』――――。 その数字は一秒ごとに数字を一つずつ減らし、それがこの学園に仕掛けられた爆弾の爆発までのタイムリミットであることは説明するまでも無かった。 「無論、この学園から逃げ出すことは校則上不可能! 王輝明学園校則第一条・王輝明学園生徒は8時40分までに登校すること。これ破ること、すなわち退学を意味する!!」 ここにいる全員が入学時に頭に叩き込まれた校則を美綺瓊は読み上げる。 「王輝明学園校則第二条・王輝明学園生徒はいかなる理由があれど、就業時間である16時まで外出を禁ずる。これ破ること、すなわち退学を意味する!!」 つまりは午前8時40分から午後16時まで、この学園の生徒たちは如何なる理由があれど、この学園から出ることが固く禁止されていた。 「校則を破れば即刻退学処分。すなわち国王になる権利、及び投票権利の失効! さぁ王輝明学園生徒諸君、高らかに叫ぼうではありませんか! 国王選挙の開催です!!」
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