0人が本棚に入れています
本棚に追加
確かに周りを味方につけるのは戦略的にはありだと思う。あなたの周りも、私の周りも。
負けられない戦いともなれば、特に。
逃げ道を塞いでじっくりと真綿で首を締めるようにするつもりなんでしょう。
「あなたは確かに優秀ね。」
埋められた外堀を思いながら口にする。
彼はそれでも緊張した顔をしている。
傍から見たら窮地に立たせられているのは明らかに私なのに。
彼だけは状況を分かっているようだ。
「そうかな。君は余裕そうだけど。」
確かに私の口元には笑みが浮かんでいる。
「理由を知りたい?」
彼は唇を噛み締めた。彼は分かっている。
私がこの勝負に勝ってしまうことを。
この状況を逆転する最終兵器を私が後ろ手に持っていることを。
彼は間違っていた。
そりゃあ、外堀を埋めることは大切だ。周りに味方は多い方が良いに決まっている。
けれど、この戦いは私とあなたの戦いなのだ。
だから私は微笑みながら一騎打ちを仕掛ける。
周りに目をやっていたあなたよりも私の方が先制攻撃が出来る。
だって私はあなただけを見てたんだから。
別に彼を負かしたいわけじゃない。
あなたは知らないだろうけど、私は知っている。
あなたは決して私に負けない。
私ももちろん負けるつもりは無い。
私は余裕ぶった表情とは裏腹に緊張しながら言葉を紡ぐ。
あなたとのこれからを変える、止めの言葉を。
「あなたが好きです。」
惚れた方が負けと言うのなら、惚れられた方が勝ちなのでしょう。
だったらあなたと私は、両方勝者になれるはずだ。
「俺も、君のことが—―――」
最初のコメントを投稿しよう!