手洗い・うがい

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手洗い・うがい

 2020年初頭、新型コロナウイルスが猛威(もうい)(ふる)い、世界中の人々に不安が広がった。  ワクチンや薬の開発が急がれる中、まず、私たちに出来ることと言えば、手洗い・うがいの徹底だった。  そんなこんなを思っていたら、旦那が仕事から帰って来た。 「ただいま~!」 「おかえり~! お疲れ様~♪ 手洗い・うがい、忘れないでね~♪」 「はいよ~♪」  すると、買い物を頼んでいた高三の長男と高一の次男も、ちょうど帰って来た。 「ただいま~!」 「ただいま~~~!」 「は~い、おかえり~! ごくろうさん、ごくろうさん!」 「はいよ~♪」 「ここに置いとくよ~♪」 「は~い、ありがとう~♪ もうすぐ、ごはん出来るからね~♪ みんなで、手洗い・うがい、徹底的にやってね~♪」 「は~い!」 「はいよ~♪」  すると、洗面所の方から、 「よっしゃッ! 行くぜ~~~ッッッ!!! オッラ~~~ッッッ!!!」 「イエ~~~イッッッ!!!」 「ウォ~~~ッッッ!!!」 ー パチ~ンッ! パチ~ンッ! ー  「ガラガラガラガラ~、ブクブクッ、ペッ!」 ー ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ー 「おまえら、痛い痛い痛いッ! よっしゃ~、次ィ~ッ!」 「イエ~~~イッッッ!!!」 ー パチ~ンッ! パチ~ンッ! ー 「ガラガラガラガラ~、ブクブクッ、ペッ!」 ー ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ー 「痛いよ痛いよ! はい~ッ、次ィ~ッ!」 「Yeah(ヤーーー)ッッッ!!!」 ー パチ~ンッ! パチ~ンッ! ー 「ガラガラガラガラ~、ブクブクッ、ペッ!」 ー ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ペタンッ! ー   「(いて)ぇ~よ(いて)ぇ~よ、もう~ッ!」  と、何だか、暴れまくっているような、(にぎ)やかな声が聞こえて来た。  あまりに、いつまでも、うちの男どもが、洗面所で、ワーワーワーワー騒いでいるので、私は、ちょっと料理の手を止めて、(のぞ)きに行ってみた。 「ちょっと、あんたたち~ッ! 洗面所で、何、騒いでんのぉ~? 向こうで聞いてたら、まるで、サヨナラホームランを打ったプロ野球選手が、チームメイトたちとハイタッチしたり、頭や背中や、パチンパチン(たた)かれて、手荒(てあら)い祝福受けてるみたいに聞こえてたけど~、ご近所迷惑になるでしょ!」 「だって、ママが()ったんじゃん、なぁ~?!」 「そうだよ~!」 「そうだそうだ~!」 「えっ? 私、何か言った?」 「()ったじゃ~ん! 『みんなで、"手荒いうがい"、"徹底的に"、やってね~♪』ってさぁ~ッ!」 「そうだそうだ!」 「だから、僕たち、みんなで協力して、ワーワーと手荒く、うがいを、徹底的にやってたんじゃ~ん!」  ……(など)と、うちのバカ男どもが(のたま)うので、私は叫んだ! 「アホかーーーッッッ!!! 気管にうがいの水が入ったら危ないやろがーーーッッッ!!! ど、ど、どアホーーーッッッ!!!」 「そこは、ママ、ご安心下され」 「何よ?」 「サヨナラホームランを打ったプロ野球選手が、三塁ベースを回って、三塁コーチとハイタッチ! ホームベース付近に選手たちが集まるものの、ランナーがホームベースを踏むまでは、みんな手を出さないじゃない?」 「ま……、まぁね」 「で、ホームを踏んだ瞬間、頭叩かれたり、背中叩かれたり、水ぶっかけられたり、手荒い祝福を受けるでしょ?」 「まぁね……」 「それと一緒! ハイタッチをして、うがいをしている間は手を出さず、『ペッ!』、と水を吐いた瞬間ッ! 手荒い祝福ッ! ……みたいな♪」 「そうッ!」 「そのとぉ~りッ! Yesッ!」  アハハ……。  全く、うちの男どもは、アホなんだか、賢いんだか……。
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