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「「・・・・・」」
平吉の問いに、パオとラフは何も答えない。
どうにか立ち上がろうと試みるが、生まれたての子鹿のように上手くいかない様子だ。
「まあ、当然やろな。象やキリンの体動かすんも初めは大変やったみたいやないか。象がキリンを、キリンが象を操作するなんて、なおのこと難しいやろな」
魚に翼が生えたところで、急に空を飛んだりはしないだろう。
身体を使いこなすには相応の慣れが、その記憶が必要なのである。
「パオ選手にラフ選手、どうやら戦闘不能の模様。よって勝者は壱ノ国です!!!」
試合結果のアナウンスがあり、歓声が響く。
「平ちゃん、戻るでありんすよ」
「せやな」
リングを下りる架純に促され、平吉が返事する。
「その毒の抗体は、仲間を大切にする心や。精進するんやな」
最後にそんな捨て台詞を残し、平吉は仲間の待つベンチへと向かった。
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