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「次はこっちの番だな」
両腕に掴んだ光の槍を投げ捨て、陸ノ国代表ゴーラが、李空と京夜に焦点を合わせる。
試合前と比べて、数倍にも膨れ上がったその姿は、マウンテンゴリラを思わせる迫力であった。
ゴーラは両腕を広げると、
「うほおおおおおお!!」
そのまま自分の胸を叩き始めた。
高らかな咆哮と共に、胸をリズミカルに打ち鳴らす様は、さながらゴリラのドラミングのそれである。
「な、なんだ」
「ぐっ」
耳をつんざく爆音に、李空と京夜は思わず耳を塞ぐ。
音という貴重な情報源を失った二人は、自然と視力に力を注ぐ。
そして、一つの違和感に気づく。
視界に映るのはドラミングを続けるゴーラただ一人。
もう一人の選手、ダイルの姿がないのである。
「りっくん、きょうちゃん!うしろ!!」
ベンチから叫ぶ真夏の声が、微かに二人の耳に届いた。
反射的に二手に分かれた李空と京夜。
二人が元いた場所に、カツン!と金属音が鳴り響く。
「よく気づいたなあ」
そこにいたのは、人ひとりを優に飲み込むであろう大口を開いた、さながらイリエワニのような風貌のダイルであった。
中央の上と下にそれぞれ金歯と銀歯を携えており、口を開いては閉じるたびに、それらがぶつかり合い金属音が響く。
たまらずダイルから一定の距離を取る李空と京夜。
必然的に、ゴーラとダイルに挟まれるかたちとなる。
「まずいな」
「ああ」
互いに背中を預け、構えるふたり。
言葉ではそう言いながらも、訪れたピンチを楽しむように、ふたりは揃って引きつった笑みを浮かべた。
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