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「おい、お前。金と銀。どっちがいい?」
「・・・はい?」
突然、ダイルから寄せられた質問に、李空は疑問で返した。
つれない返答に、ダイルは眉間にシワを寄せて、不機嫌そうに続ける。
「なんだよノリ悪いな。お前、斧持った神が川から出て来たら、ビビって逃げるタイプか?」
「はあ。まあ、まず逃げるでしょうね」
「かぁ〜。それじゃあ物語が始まらねえだろうが。いいから選びな!」
「えーと、じゃあ金で」
「金だな」
ダイルはニヤリと笑うと、大きく口を開いた。
「はあ、おへ」
「え?」
「押せって言ってんだよ!」
攻める口調で言い放つと、ダイルは再び口を開ける。
どうやら、金歯を押せと言っているらしい。
「い、いやですよ」
「あ?」
ダイルは李空をギロリと睨むと、仕方なく自分で押そうと試みる。
しかし、彼の今の形態はワニのそれと同じ。
短いその腕は、とてもじゃないが口まで届かない。
一体どうするのかと眺めていると、ブンッ!っと尻尾を器用に前にやって口に突っ込んだ。
「そんなのアリかよ・・・」
自分の尻尾を食べているかのような、一見間抜けなダイルの姿を前に、李空は呆れたように声を漏らす。
「って、それ銀じゃないですか」
「ん?下のは銀だったか。まあいいや」
一体そこに何の意味があるのかは知らないが、ダイルが尻尾で押し込んだのは銀歯の方であった。
程なくして、ワニの皮のようなダイルの皮膚が熱を帯び、真っ赤に染まっていく。
「恐怖で小便ちびんなよ!『ワニワニパニック』!」
瞬間。残像が見える程の速さで辺りを噛み付きながら、李空と京夜めがけてダイルが迫った。
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