48人が本棚に入れています
本棚に追加
才
それは10の歳に授かる、皆に平等に与えられし特殊能力。
しかし、平等なのは与えられるという事実のみ。
能力の良し悪しはそれに付随しない。
炎の耐性を得た者は消防士に。水の耐性を得た者は海上保安官に。
その特性を活かした職に就くのが、この世の定石であり常識であった。
人生一度きりの大博打。その後の人生を決めるルーレット。
このガチャで引きの強さを見せつけた者だけが、社会の上位に君臨することを許されるのだ。
そんな混沌とした世界においても、極めて異質な存在があった。
攻撃的な才を授かった者同士が鎬を削りあう総合格闘技。人呼んで、サイストラグル。
サイストラグルに憧れぬ漢なし、といった謳い文句の通り、世界中の特には男から絶大な支持を得ている。
それは透灰李空においても例外ではなく、幼き頃から密かに憧れを抱いていた。
そして迎えた10歳の誕生日。
その歴史になぞり、生まれた時刻に合わせて教会を訪れ、祈りを捧げる李空。
歴史が語るには、その直後に目に見えた変化があるはずなのだが、この時の李空にはそれが見られなかった。
己の才が不明なまま、そわそわとした気持ちで数日を過ごした李空だったが、ある日悟ってしまった。
悟ったことで、李空は涙した。
というのも、それというのは彼の願いとは程遠いもので。
「他人の才が読み取れる」という、どこまでも地味で汎用性のないものだったのだ・・・。
最初のコメントを投稿しよう!