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校門から続く一本道を挟むように、平屋建ての校舎が左右に5つずつ並ぶはここイチノクニ学院。
それぞれの校舎には両の手の指をイメージした名が付けられており、右端から「東の子」「東の薬」「東の中」「東の人」「東の親」、道を挟んで「西の親」・・・といった順に並んでいる。
同じような造りの校舎に、それぞれ同じような背丈の学生が吸い込まれていく中、李空ら3人は左手の右端、すなわち「西の親」へと歩を進めていた。
「りっくんも今日から同じ教室だね!」
「そうだな」
「毎日楽しくなるね!」
「・・そうだな」
「騒がしくて勉強どころじゃないだろうな」と、真夏に聞こえないように呟き、校舎の中へと入る。
李空たちが住むここ壱ノ国では、10の歳になった翌日から学院の「東の子」に通い始める。
それからは誕生日を迎える毎に一つ左にずれていき、「西の子」を抜ける20の歳に晴れて卒業となる。
このシステムにより入学や進級の時期は人によって様々なため、毎時間完結型の授業を行うことで、どのタイミングでも履修が可能なカリキュラムとなっている。
「そうでござった。李空殿は本日が誕生日でござったな!」
「おいおい。いつまでそんな口調で話してんだよ」
「別にいつも通りでござるよ。生誕めでたきでござる!」
「どうも。お前のせいで最悪な目覚めだったけどな」
今日で晴れて15の歳になった李空は、真夏と卓男と共に「西の親」の教室へと向かう。
若人たちの甲高い声が響く教室を一つ、また一つと通過し、廊下をゆっくりと歩いていく。
その突き当たり。他と比べて静かでおんぼろな造りの教室に、3人は我が物顔で入っていった。
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