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イチノクニ学院のクラスは才の性質によって分けられる。
スポーツ向きの才の持ち主は「朱」、頭脳に特化した才の持ち主は「藍」といった具合だ。
それぞれの生徒は自身のクラスの色と同じネクタイ、もしくはリボンを身につける決まりとなっている。
そんな才の英才教育をモットーとしているここイチノクニ学院で、才能なしのレッテルと同義になるは「玄」の色。
李空と卓男が身につけるネクタイ、そして真夏がつけるリボンが正にそれであった。
「西に来ても落ちこぼれの空気は同じだな」
「ルーザーはどこにいっても敗北者だよ」
「やっといつもの感じに戻ったな」
「何のことだ?」
教室に入ると同時に真夏が友達のところへ駆けて行ったため、卓男は本来の口調に戻っていた。
気持ち悪い口調の時の卓男は軽いパニック状態であるため、その時の記憶はほとんど残らないのであった。
「玄」の教室は他と比べて狭く、通う生徒も少ない。
ざっと見渡してみると、李空たちの他に生徒は5人ほどしか見当たらなかった。
いざ卒業しても「玄」のクラスでは就職先も限られてくる。
故にクラスが「玄」と判った時点で学院には通わず、親の元などで働く生徒も少なくないのだった。
「授業始めるぞ〜。席につけ〜」
生徒たちと同じく、あまり覇気の感じられない中年の男子教師がやって来て呼びかける。
李空にとっては初となる西の授業は、こうしてヌルッと始まった。
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