WEAKEST WAKES UP

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WEAKEST WAKES UP

李空はこの日、最悪な目覚め方をした。 『朝だよ起きて!朝だよ起きて!朝だよ起きて!』 最低限の家具だけが置かれた無機質な部屋に、可愛らしい女の子を連想するアニメ声が響く。 2段ベッドの上から聞こえてくる、連続的でどこか無機質なその声は、自らの意思で止まる気配を一切見せない。 「・・ったく」 いつまでも鳴り響くその声に、いい加減嫌気が差した李空は、2段ベッドに掛けられた梯子に足をかけた。 一段、また一段と踏みしめる度にギシッ、ギシッと鳴る梯子の先には、幸せそうに眠る一人の男の姿があった。 『朝だよ起きて!朝だよ起き・・』 男の顔の隣にある携帯電話を指でなぞると、女の子の声がピタリと鳴り止んだ。 どうやらその声は、男が目覚ましとしてセットしていたものだったらしい。 ピンと張り詰めた静寂が部屋を包む中、 「・・・リムちゃん?どこ行くの?」 アラームを設定した張本人である男が、夢の中から呼びかけてくる。 その光景に呆れた李空は、仰向きで眠るその男の眼前で、ポケットに忍ばせておいた風船を膨らませ始めた。 プスッ、プスッと音を奏で、空気入れの上下運動に応じて、李空の手中で風船がみるみる膨らんでいく。 やがて風船の許容するそれを超え、部屋に破裂音が響いた。 「・・はッ!?リムちゃん!!??」 圧に耐えかね、バンッと割れた風船。 その音に合わせて、スヤスヤと眠っていた男がハッと目を覚ます。 寝ぼけた眼が李空の顔を捉えると、男は面白くなさそうに、再び布団を頭からかぶった。 「おい!起きろよ!」 「男に起きろと言われて起きる男がいるか!」 「リムちゃんとやらに起きてと言われても一向に起きなかったじゃないか」 「僕が起きるとリムちゃんは起きてと言わなくなるだろ」 「屁理屈ばっか言いやがって。じゃあどうやったら起きるんだよ」 「リムちゃんを現実の世界に呼ぶんだな」 「一生寝てろ」 男に言い残すと、李空は登ってきた梯子を降り、やれやれと首を振りながら、小さな洗面台に向かった。 そこで顔を洗うと、次いでハンガーに掛けてあった制服を手に取り、着替えを始める。 シャツのボタンを全て留め終えた頃。 2段ベッドの上からゴソゴソと音が聞こえ始めた。 「やっと起きたか」 「今日も僕はリムちゃんがいない世界を生きると決めたんだ。存分に褒めてくれ」 「はいはい。すごいな」 適当に返事をしながら、支度が全て整った李空がドアノブに手をかける。 「ちょっと待ってくれよ。僕はまだパジャマだぞ」 「知ってるよ。だから置いて行くんだ」 「おいおい。寝言は寝て言ってくれ」 「際の柄と書いてだよ」 「だから寝言は・・」 「じゃあな」 「待ってくれよ!マイメ〜ん!」と、泣きわめく男の声を背に、李空は悠々と部屋を後にした。
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