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「そうなんだ~、大変だったんだね。」
私はそう言いながら彼女をよく見ると、長い黒髪を白いリボンで結んでいた。
「お姉さん、またここに来る?」
「ん~、どうだろう...分かんない。
でも私のユッカはこれからも探し続けるわ。」
「ユッカって言うんだ...
どんな子なの?」
「あぁ、チラシがあるから...」
私は彼女に手渡した。
「綺麗な子...」
彼女は灯り始めた街灯の明かりに照らされたユッカを見ながらつぶやいた。
「私が部屋の窓を締め忘れて...
のら猫に襲われたようなの。
きっと傷ついて泣いているわ。
可愛そうな私のユッカ...
ゴメンね...
私がまたここに来たら連絡しようか?」
「ありがとう...
でもわたし...電話持ってないの。
きっとまた会えるよ。
きっと...」
白い月は次第に黄色く染まってまわりの雲を仄かに照らしていた。
彼女の白いセーラー服は闇と月光の間で不安定に揺らいでいる様に見えた。
その時、彼女が握りしめていたユッカのチラシは月光に照らされてキラキラッと闇の中に落ちていった。
「あっ!」
私は地面に落ちたチラシを拾い上げて彼女に手渡そうとした。
「わたし...待っていた大好きだった人に出会えた気がするの。
今までありがとう...
いつかまたお姉さんと一緒に暮らしたいな...」
白い儚い光は闇の中から三日月の光に導かれるように夜空へ消えて行った。
私はベンチに座り冷えた身体を窄めながら、足元に落ちたユッカのチラシを涙も拭かず見つめていた。
おわり
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