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私の愛猫ユッカ(雪華)は深いブルーの目が綺麗な2歳の白猫で箱入り娘の寂しがり屋さんだった。 私が外出しようとすると雰囲気を察して足にしがみついて離れなかった。 だから家を出る時は彼女のお気に入りのカリカリを出して気付かれないようにこっそりと家を出る日が続いていた。 私が家に帰り玄関のカギを開ける音が聞こえると2階から大騒ぎしながら降りて来る足音で私を出迎える。 そんなある日、家に戻るといつもの出迎えがなく1階の部屋のティッシュペーパーが散乱し、壁は引っかき傷が刻まれアチラコチラにマーキングの臭いがして彼女のお気に入りのカリカリも床に落ちて半分ほど食べられていた。 彼女はこんなお行儀が悪い子ではない。 私はハッとして2階の部屋へ駆け上がった。 ベランダの窓が少しだけ開いていた。 きっと私が閉め忘れたんだと思った。 部屋には真っ白な毛が所々に散乱して中には赤く染まった毛もあった。 私はベランダに出て 「ユッカ!ユッカ!」 と呼んでみたけど彼女は応えてくれず、力なく座り込んでしまったベランダの床の冷たさが心を震わせ涙が頬をつたった。 近所で何度か見た事のあるオスの野良が入り込んで私のユッカを襲ったのだと思った。 それから雪のような私のユッカは姿を見せる事なくあの愛らしい甘えるような鳴き声もこの家から消えてしまった。
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