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激しい銃撃の音がロサンゼルスに鳴り響く。
少し古めのビルに、テログループが立てこもっている。
現在警察はテロ犯により本部隊が足止めされ、30人の警官で交戦していた。
対する立てこもっている人数は24人。圧倒的に人員が不足して突破口が見いだせない状態だ。
私、アルフは5年目のまだ新米。バディのハラーに何とか助けられ戦線を維持していた。
「本部隊はまだ到着しないのか…!」
犯人がすぐそこにいるが、確保できないもどかしさに苛立ちを隠せない。
「まぁ落ち着けよアルフ。俺らの仕事はヤツらをここから逃がさないことだ」
「あぁそうだよそうでした、ご忠告どうもハラー隊長」
ハラーは同期にしてこの1部隊の隊長を務めるほど優秀なやつだ。
こいつ見たく、どんな時でも冷静になれば少しは出世するんだろうかね。
雑念混じりの思考を切り替えようと周りを観察すると、ピタっとテログループからの射撃音が止まった。
「撃つのをやめた…?弾切れか?」
「こんな大掛かりなことしといてそれはないだろう。全員ジャムったか、もしくは…」
考えこむハラーの言葉を遮るように、巨大な爆発音が辺りに響いた。
ビルからは黒い煙が立ち上り、現場に動揺が走る。
「何事だ!?」
「屋上付近で爆発を確認!ビルは4階から屋上まで半壊、その時の破片で隊員が2名負傷!」
「クソ!捨て身の作戦に出やがったか!ヤツらはどこだ!?」
未だビルは黒煙で視認できない。すると、煙から人影らしきものが見え、武器を構える。
「生き残りか……?」
人影が煙から姿を現す瞬間、怒号のような叫びが聞こえた。
「突撃ィィィ!!!」
その瞬間、5人のテロ犯が銃を乱射しながら煙から飛び出してきた。
「ぜ、全員構えろ!!!」
一時の静粛が、銃声と悲鳴の地獄へと変わり果てた。
30分ほど経つころには、双方10人も満たない人数まで消耗していた。
「ハラー!どうにかんなんねぇのかこの状況をよ!」
「ダメだ、本部隊もまだ到着しないのも含め最悪だ」
こちらは2人、テロは残り3人。倒れている仲間を見る度に気が狂いそうになる。
「聞いてくれ、このままじゃジリ貧で全滅するだけだ。だから勝負に出よう」
「勝負って、何を」
「2人で同時に左右に突っ込む、敵さんも流石に一瞬隙ができるだろう。そこを突く」
「やるしかねえよなクソ!信じるよハラー!」
合図と共に、2人は同時に左右へ飛び出した。
テログループのリーダーであろう大柄の男の前にいる部下2人は、左右から飛び出したアルフ達に一瞬戸惑った。その隙をついた2人が先に発砲、そのまま最後の男に向け銃声を放った。
パン、パン、パンと同時に3発の銃声が響いた。
2発の銃弾が命中した最後のテロ犯が力尽きる。その後ろでもう1人、冷たい地面へと身を落とした。
「嘘だろ……、ハラー?」
倒れたハラーの元に駆けつけると、地面が赤色に染まっていた。全て、ハラーの体から流れ出たものだ。
「ハラー、返事してくれよ。すぐ救急車を、いや俺が病院に……」
そうハラーを持ち上げるが、ピクリとも動かない。
「なぁ、起きてくれ。俺に、お前の相棒アルフに指示をくれよ……」
「ちくしょう、ああああああああああ!」
1人の男の悲痛な叫びは、サイレンの音にかき消されていった。
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