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【出逢い】
「……だから、俺は興味無い。行きかねる」
向かいの席に座る子会社の社長に冷たい視線を送る。日本屈指の財閥、堀崎商事の会長次男である堀崎武仁は、溜息をついた。
その視線に慌てて額汗を拭いた社長は、武仁に泣き付く。
「そんなことを仰らないでください!先方の社長がお好きなのです…」
「其方はこのような接待が常なのか。経費を見直す必要があるな」
「も、申し訳ございません…!ご勘弁を……!」
再び溜息をついた武仁はひきりなしに頭を下げる彼に、今回ばかりは致し方ないと言い残し応接室を出た。
話は1週間前。この高田社長の勘違いにより、取引先に損失を発生させてしまう事案が発生した。取引先はあまり良い企業とは言えないが、独占企業であるため簡単に繋がりを切ることは出来ない。
そのため、先方のご機嫌取りのために急遽親会社で副社長を張る武仁にも接待の出席が要請されたのだ。
「面倒だな…」
副社長室に戻った武仁は、接待の時間までにやる事を終えるべく机に向かった。
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